矛盾ケヴァット

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【バンドリ】BanG Dream! 3rd Season 12~13話感想

堂々完結! 僕も全話の長文感想をやりきったので満足です。

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遂に有咲作曲! しかし作詞はおあずけ

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語りたいことは尽きないのですが、まずは12話最大のトピックから参りましょう。たえのReturns、香澄のDreamers Go!、沙綾のStep × Step!と、2~3期を経てりみ以外も次々と作曲を経験していく中、ただ1人未経験のままだった有咲にも遂にその時が訪れました。有咲制作の楽曲は言わば最後の切り札とも言うべきものだったわけですが、誰よりも本気で武道館を目指していた有咲の思いを結実させた楽曲が武道館で披露される形で放ってきたのは、やはり流石というべき物語への織り込み方でした。まりなさんから武道館行きが告げられた時、ポピパメンバーの全員がまず有咲を祝福したのも非常に印象的で、嬉しかったところです。

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極めつけは有咲のキーボードソロを聴くや否や、即興でギターパートを乗せてきたたえの描写でした。一度はポピパの裏切りとも言える行為をしてしまった末に、自分のポピパへの思いを形にしたReturnsが受け入れられるか不安だったたえにとって、それを受け入れるとばかりにキーボードパートを奏でた2期11話の有咲の行動は赦しそのものだったに違いありません。あの時と全く同じシチュエーションで有咲の作った楽曲を肯定するたえの演奏は、無言でありながらこれ以上ないほどの感謝が込もった返礼になっていました。

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歌詞、頼んでいいか……?

一方、意外だったのは有咲が作詞までは行わなかったことです。Returns、Dreamers Go!、Step × Step!はどれも作曲者が作詞も行ったので、その流れで有咲も作詞まで手掛けると思い込んでいたのですが、ここに来て変化球が投じられた形と言えます。とはいえ、これまでの有咲の言動を思えば、香澄に作詞を託したのは全面的に頷けるものです。

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誰よりも香澄の紡ぐ言葉を心待ちにしているのが有咲であり、『君に伝うメッセージ』では畏まった祝辞を書こうとしていた香澄に対して厳しく叱咤してもいました。Returnsでたえが自分の思いを綴った詞を香澄に歌ってほしいと願ったように、有咲は自分の曲に香澄の詞を乗せてほしいという、それぞれに違った形で香澄への信頼が楽曲に反映されているのです。とはいえ、それはそれとして、我々オタクとしては「有咲の言葉で聞きたいんだよ!」という気持ちも正直ありますし、いずれ有咲の作詞した楽曲は聴いてみたいものです。まあ、「それなのにね 顔が近い」みたいなことになってしまうのかもしれませんが……。

 

曇ったりみを照らし出す、ポピパの一員が増えていく未来

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ステージに立っちゃったら本当に終わっちゃう……

2期では沙綾が悩んでいると即座に察して迎えに行ったり、3期になると数多の素材を駆使してポピブイを制作したりと、この26話を通して八面六臂の活躍を見せてきたりみが最後の最後になって曇ってしまいます。思えば、2期以降のりみはスマホを通してポピパの“今”を撮影し続けてきました。それ故に、メンバーの微妙な心情の変化にも敏感に気づけてきたのですが、そんなりみだからこそ、BanG Dream!大会に打ち込む“今”が当たり前になりすぎて、それが失われる未来を見れなくなっていたのです*1

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みんなの顔、見えないね……

また、武道館の円形ステージでリハーサルをしている際のこのセリフも印象的でした。これも常にスマホのカメラ越しにみんなの顔を見続けてきたりみにとって、観客しか視えない景色というのはやはり不安なのかもしれません。

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『二重の虹』で、そしてアニメ2期でもそうだったように、ポピパを袋小路から抜け出させてくれるのはいつだって香澄の行動力です。いつもは舞台袖で行っている「ポピパ!ピポパ!ポピパパピポパ!」の円陣をステージ上で行うという暴挙。しかし、なんと武道館に詰めかけたファンもそれに呼応してくれました。「ああ、俺もポピパの一員なんだなって……」というネタコピペがありますが、まさにその通り。ポピパメンバーの顔が見れなくて不安になっていたりみを、ポピパの一員であるファンのみんなが救ったのです*2

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星の鼓動は、みんなだった!

12話では、1期1話の放映以来3年以上の長きに渡って曖昧にされてきた概念である、星の鼓動の答えも遂に提示されました。この“みんな”とは香澄の周囲の人々だけではなく、ポピパに関わってきた全ての人達、そして、今後関わるであろうあまねく世界中の人々をも指しています*3。いつも5人だけで行っていたポピパパピポパの掛け声をその場の全員で上げるという5人の大きな輪が武道館という夢を包み込んでいる景色は、まさにポピパの未来がこの先にも果てしなく広がっていけることを証明するものです。これで、りみの正面には一面ポピパメンバーだらけという安心の空間が出来上がりました。触れるものはすべて未来だ、そろそろ覚悟を決めろ!

 

世界を広げるミライトレイン ~Poppin'Partyの解答~

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キミがホームに立ってる

ただそれだけで 胸が高鳴るから

そんな中で演奏したミライトレインは、迷えるりみを始めとした他のメンバーを、そして会場にいる観客全員を、未来行きの電車に乗せて一緒に連れて行くという希望に満ち溢れた歌詞となっていました。僕もあなたも世界中の人々もポピパの一員という名の乗客なわけです。また、電車というモチーフは香澄のキャラソンどきどきSING OUT!以来の登場でもあり、ここでその楽曲を回収してくるか!と虚を突かれた気分にもなりました。

「涙→キボウ」の電車に乗って

前だけ見つめてキミを待つよ

電車に乗った香澄が駅から乗ってくる“キミ”を待ち、迎えに行くシチュエーションも、どきどきSING OUT!と同一のものです。であればもう心配はありません。このミライトレインに乗って、前だけを見つめていればキボウという終点に辿り着けるはず。希望の未来へレディ・ゴーッ!!(バンドリはガンダム

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……とはならないでしょう。シチュエーションは一緒ながら、どきどきSING OUT!の電車とミライトレインは別物と考えるべきです。どきどきSING OUT!の電車には涙という始発駅とキボウという終着駅のある、直線上の路線でしたが、諸々の文脈を踏まえるならばミライトレインは環状線と結論付けられます

終わることを恐れているりみに対して、キボウだろうと何だろうと終点のあるものを提示するのはメッセージとして弱いと言わざるを得ませんし、他方、環状線に終点はありません。終わりのない形だからね。また、元々ミライトレインは「ぶどーかんの曲」という仮題でした。回転ステージを最大の特徴とする武道館の名を一時は冠していたことからも、ミライトレインの進むべき道が環状であることを裏付けていると言えます。

極めつけは、いつまでもどこまでも続いていく道を歌っている曲でありながら、その電車の見ているものが「同じ景色」であるというミライトレインの歌詞そのものです。無限遠に続いていく直線上の線路をイメージしているならば見える景色は駅を越えるごとに変わっていくはずで、「同じ景色」というワードが使われるのは根本的におかしいとしか言えません。ところが、同じ線路を何周もする環状線であるならば、それは全く問題にならなくなります。この電車に乗りながら、同じ景色に何度でも戻って来れるのですから。そして、武道館の“みんな”でポピパパピポパの掛け声を上げたように、今後、ミライトレインの環状線はどんどんその大きさを広げていくでしょう。それこそ、世界を包み込むほどに。

この大会までの日々が楽しかったのだとしたら、また同じような大会に出れば、同じような喜びが味わえるはずです。それでいて、ゆく川の流れが絶えずしてしかも元の水に非ざるように、ポピパの世界が広がり続ける限り、その時に見える景色も今回とはまた異なっているはずです。ノンノンだよりみりん! バンド少女は日々進化中! 同じ私達も、同じステージもない!!

繋ご!世界のぜんぶ

出会お!旅から旅へと

紡ご!イマジネーション

夢の先にはGlory

そして、ミライトレインはDreamers Go!のアンサーソングでもあります。イマジネーションを紡ぐのはともかく、どうやって世界を繋ぐのか、どうやって人々と出会う旅をするのかが2期最終回の時点では判然としなかったのですが、そこに電車というモチーフが加わることで、ようやく当該歌詞がはっきりと像を結びました。世界中に広がる環状線を作り上げるのです。また、ミライトレインにも「この夢の先まで 一緒に進んで行こうね」という歌詞があるのですが、その先に何があるのか(=Glory)もDreamers Go!を読めば判明する仕掛けになっています。

もう一つ、ミライトレインとDreamers Go!は容量という概念で結びつけることができます。Dreamers Go!ではに唄や思いを詰め込もうとしていましたが、これがミライトレインになると星の鼓動たる“みんな”を連れて行く電車へと容量が爆上がりしており、ポピパの懐の深さがとてつもないインフレーションを見せていることが窺えます。この調子で世界中のみんなを乗せられる存在へと成長していくとすると、いずれポピパはなってしまうんじゃないかな……星そのものに……。

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完全体となったBeautiful Birthday ~RAISE A SUILENの“祝福”~

ポピパがミライトレインで2期から続いた物語にひとつの解を提示してきたように、RASとRoselia“これまで”の集大成となる楽曲を引っさげて武道館に乗り込んできました。

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2番手となったRASが放ってきたのは、11話で披露された際には“観客席”にいたチュチュがステージに上がっての完全体Beautiful Birthday。11話の演出は“観客席”にいる演奏できない少女=珠手ちゆに対して、チュチュが作り上げてきたRASから感謝と祝福のメッセージが届くのが視覚的に分かる出色の一幕だったのですが*4、その演出ではどうしても解決しない歌詞がありました。

もうそこに影はない

“観客席”にいる珠手ちゆの“影”にメッセージを伝えるシチュエーションなだけに、ここだけは上手くハマりません。それもそのはず、この曲はチュチュがステージに立ってBeautiful Birthdayを演奏することにより、完全に“観客席”の珠手ちゆの“影”が消えるという二段構えで完成させる心積もりだったのです。

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I let, I let you…

また、チュチュが加わったことにより、本曲にも随所にラップパートが追加されました。僕のリスニング能力が壊滅的なため、残念ながらほぼ内容を聴き取ることは出来なかったのですが、それでもイントロ部分の最も重要な英語歌詞を聴き取ることにだけは成功しました。11話Ver.からDon't let go(手放さないで)という合いの手は既にありましたから、この歌詞にもyouの後にgoを補ってやる必要がありそうです。

即ち、I let you go.(お前を追放する)。11話でパレオからチュチュに贈られたRASを手放さないでほしいというメッセージが、そのままステージに上がったチュチュ自身の珠手ちゆを追放するという決意表明へと昇華されています。演出の上でも、歌詞の上でも、これで完全に珠手ちゆの”影”はいなくなりました。

(※2020/4/24追記)

やはりこのアカウントのリスニング能力はゴミ同然でした。正しくはI'm grad I met you.のようですので、上記の考察は一切合切間違いです。恥ずかしい~!

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また、6話では失敗に終わった円陣が今度こそ成功します。円陣を拒絶していたチュチュがそれを受け入れたこと、6話では流されるまま円陣に加わったレイヤが今度はRASを導く掛け声を上げること、それをRASメンバーの誰もが期待していること、この短い描写だけで、3期で紡がれたRASの絆とそれぞれの確かな成長を鮮明に物語っていました。この結束を確かめた後に演奏するわけですから、Beautiful Birthdayは珠手ちゆから生まれ変わったチュチュの存在を祝福すると同時に、RAISE A SUILENの誕生を祝福する楽曲でもあると言えるでしょう。

世界を作り出すのは

お前の本気の産声だけ

DRIVE US CRAZY Cメロの歌詞が、今のRASの姿をこれ以上なく物語っています。

 

キャラクターとリアルライブをリンクさせたAvant-garde HISTORY ~Roseliaの“感謝”~

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大トリを務めることになった†神聖青薔薇騎士団†Roseliaはというと、紗夜作曲の完全新曲、Avant-garde HISTORYで決勝を戦いました。ここまで披露されてきたミライトレインもBeautiful Birthdayも感謝が一つのキーワードになっていましたが、作曲を担当した紗夜曰く当初は39という仮題であったらしく、Avant-garde HISTORYはとりわけその感謝というテーマ性が強い楽曲になっていました。まあ、39℃の熱を出したのがそのためだったのは正直どうかと思いますが……。

ミライトレインは2期から続くPoppin'Partyの物語の、特に最後で出されたDreamers Go!という宿題への解答とでも言うべき楽曲です。Beautiful Birthdayに至っては極めて分かりやすく、3期を通じてのRAISE A SUILENの物語のこれ以上ないくらいの結実です。であれば、決勝を前にした友希那が「私達と、Roseliaに関わってくれた全ての人に贈る物語」と述懐していたように、Avant-garde HISTORYもアニメにおけるRoseliaの物語を体現していると考えたくなるところなのですが、その歌詞をどう読んでもアニメがさほど反映されているとは思えません。というのも、この楽曲はリアルバンドRoseliaのこれまでの歩みと、それを支え続けてくれたファンに対しての感謝を綴ったものと解釈すべきものだからです。

僕はRoseliaをずっと見てきましたが、メンバーが替わったり、いろいろな変化があったじゃないですか。そういった中でもRoseliaは不死鳥のように蘇っているというか。

バンドのメンバーが替わると、そのバンドらしさを失ってしまうこともあるじゃないですか。そういうのもあるけど、彼女たちには“ブレないRoseliaはこう”っていうものがあるんですよね。残ったメンバーとか、去ったメンバーにもみんなにあるんじゃないかなって思っていて。こんなに紆余曲折があっても、ファンも含めてみんなが応援してくれて、不死鳥のように蘇って。

昨年5月に実施された上松範康氏へのインタビューにおける、FIRE BIRDへの思い入れを語るくだりは、今回のAvant-garde HISTORYにも同様に適用できるものです。メンバーの脱退という辛く悲しい出来事を乗り越えさせてくれたリアルバンドRoseliaファンへの感謝が詰まった歌詞と解釈すれば、Avant-garde HISTORYは非常にスッキリと読み解けます。

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非情な現実に 飲み込まれても

涙のなか 感謝を伝う

辛い悲しみごと 背負いながら歌った

軌跡 全て意味があったと知れたから

Aパートは特に去っていったメンバーへの思慕と感謝を印象づける歌詞になっているのですが、その際のアニメのカット割りもそれに呼応するかのようにリサと燐子を映しており、その上で最後に力強く歌い上げる友希那の姿へと転換していきます。

乗り越えた先の景色を 美しいと知るからこそ

前を向いて進めるの 永久に

そしてサビはこのフレーズで締めくくられます。キャラクターとリアルライブがリンクする次世代ガールズバンドプロジェクトらしく、リアルバンドRoseliaが宿す決意をキャラクターRoseliaが歌ったもの、それがAvant-garde HISTORYなのです*5

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みんな……いつも、Roseliaを支えてくれて、ありがとう

僕は7話のシナリオは今でも極めてお粗末な内容だったと思っていますし、やはり納得がいっているとは言えません*6。7話において納得のいかなかった点の一つは、物語上においてオーディエンスと無関係に立ち直ってきたキャラクターRoselia、そして湊友希那が、突然ファンに支えられているという認識を持ち始めたことでした。キャラクターRoseliaがメンバーの入脱退を経験したわけでは決してないため、やはり物語上は違和感のある描写だったと断じざるを得ません。しかし、リアルバンドRoseliaの思いが詰まったものとしてはしっかり受け止められるものであることも事実であり、少々複雑ですが、この点については納得して受け入れられそうです*7*8

 

3つのバンドが、1人の偉大な先駆者が、夢を撃ち抜いた「BanG Dream!

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みんな……見事にやりきったね!

1話で鳴り物入りの再登場をして以来影を潜めていた元SPACEオーナー・都築詩船が13話にしてようやく再び姿を見せました。杖をついている老人に階段を登らせる辺り、月島まりなもうちょっとバリアフリー意識持てよなどと思いもしましたが、3バンドが「やりきった」ことを称えるその姿は1期と変わらぬ信条を感じさせるものでした。彼女の決め台詞といえば言わずもがな「やりきったかい?」だったわけですが、その決め台詞で質問するまでもなく3バンドが「やりきった」と分かるのでしょう。

そんな登場するだけで面白いミームみたいな存在である都築詩船から告げられる運命の結果発表にて、グランプリの栄冠にはRoseliaが輝きました。これは僕の価値観なのですが、勝負事において引き分けが一番つまらないと考えているため、ちゃんと決着がついたことにまず安堵しました。そして、間髪入れずにRASにはベストパフォーマンス賞が、ポピパにはベストバンド賞が与えられました。よく分からんけど、みんな違ってみんな良い!

結局”バトルもの”としての要素は骨抜きになった感が否めませんが、6話での紗夜とチュチュの会話で語られた勝敗そのものが音楽の優劣にはならないというのは3期のテーマの一つです*9。勝敗如何にかかわらず、武道館という夢の舞台で、「やりきった」演奏が出来たのなら、それは夢を撃ち抜いたと称賛されるべきに違いありません。

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これが……これこそが、大ガールズバンド時代や!

忘れがちなことですが、元々SPACEはガールズバンドの聖地でした。ライブハウスに付随する怖くて危なそうなイメージを払拭するためにと都築詩船が立ち上げ、そしてオーディションでやりきった演奏ができたバンドをそのステージに上げてきた場所です。それが今やガールズバンドは大流行し、ライブハウスはどこも予約でいっぱいという時代が到来しています*10誰もが気軽にガールズバンド活動を楽しめる、そしてその頂点に立ったバンド達が「やりきった」演奏をしてくれる、そんな大ガールズバンド時代を迎えられたわけですから、バンドリ3期において都築詩船もまた紛れもなくその長年の夢を撃ち抜いた人物です。SPACEのラストライブを観て上京した六花が上記のセリフを発し、大ガールズバンド時代を率いる存在になっているのも、この時代の到来における都築詩船の功績の大きさを裏付けています。

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12話で即興演奏をしたたえの言葉によれば、夢を撃ち抜く瞬間に!はBanG Dream!大会の非公式テーマソングだそうです。3つのバンドが武道館という夢舞台で最高の演奏をし、1人の偉大な先駆者が夢見続けた世界の訪れともなった大会の最後を締めくくるのは、3バンド合同による夢を撃ち抜く瞬間に!というそれこそ夢のようなステージでした。12~13話のBDは2~3期のサウンドトラックに付属しているものなわけですが、そのサントラにもこの3バンド合同の夢を撃ち抜く瞬間に!がBanG Dream!」というタイトルでシークレットトラックとして収録されています。BanG Dream!の名のもとに、夢を撃ち抜く。小説版から続いてきたテーマが、アニメ3期をもって再び実現を見ることとなりました。

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Poppin'Partyのライブはいつ見ても楽しそうで、

他のバンドも周りの人も、自然とみんな

あなたと同じ顔をする

12話にて友希那が語ったように、まさにステージに立つ15人の誰もが、観客席に映されたCHiSPAやGlitter*Green、ポピパメンバーの親族の人々が、そしてこの武道館にはいないAfterglowPastel*Palettesハロー、ハッピーワールド!に至るまでが、香澄というイニシャル(言い出しっぺ)と同じ満面の笑顔をしている様が描かれます*11

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そしてそれは、誰よりもBanG Dream!大会の勝敗にこだわっていたチュチュも同様でした。このBanG Dream!」のステージングを考案したのは他ならぬチュチュであり、戸山香澄という強大なイニシャルに触発された結果、自分の音楽を認めさせることに腐心してきたチュチュが、他人の音楽を認め、そして認めさせるために己の“プロデュースヂカラ”を最大限投入することにより、15人全員が眩い輝きを放つ最高のステージが実現したのです。

 

最高の完結を迎えた3期、しかし4期に向けての伏線は十二分

以上、長々と語ってきましたが、7話の友希那の描写やバトル要素の骨抜きっぷりなどの不満はあるにしても、2期から続く物語として、そして1期をきちんとリスペクトした作品として、バンドリ!3期は非常に綺麗に完結してくれた作品だと思っています。

とは言うものの、バラ撒いた伏線を大量に残しているという側面があることは否定できません。むしろ、12~13話という最終盤ですら伏線を回収するどころか更に伏線をバシバシ張ってきたようなところすらあり、アニメ4期へと展開する可能性は非常に高いと考えられます。

世界的な被害をもたらしている新型コロナウイルス騒動によって無期限延期となってしまいましたが、本来であれば迫る5月3日にメットライフドームでのGirls Band Party!ライブが予定されていたわけですし、そこでアニメ4期の制作が発表されていた可能性は非常に高かったと思われます。

3期がこれほど美しい完結を見せただけに、その先を論じるのは些か無粋とは自覚しているのですが、バンドリ!プロジェクトというミライトレインに搭乗してしまった者としてはやはりそこに思いを馳せずにはいられません。アニメ4期、そしてRAS参戦が決定しているガルパにおいて、2~3期でバラ撒いた伏線がどのように影響してくるのか、思いつく限りで列挙していきたいと思います。

Galaxy、能々美子、佐藤家のバックボーン

まず間違いなく、2~3期を通して残された最大の伏線および謎はこれでしょう。Galaxyが何故リニューアルオープンに至ったのか、一度閉店した理由は何なのか、細々と八百屋を営んでいるにもかかわらずマスキングをお嬢様学校に通わせている佐藤家の羽振りの良さはどこから生じるのか、能々美子がGalaxyのオーナー代行に就任するに至った経緯は何なのか。能々美子にとっての“夢”は何なのか……。2期を観終えた時点で、3期でそれが語られるものと期待していたのですが、まさかの一切触れずにスルーという予想外の結末を迎えました。完全回収は無理だとしても、流石にちょっとくらいは触れると思ってたよ!?

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まあそれだけならばオタク特有の深読み失敗と自省して終えられなくもないのですが、13話の描写を見る限り、やはりそうも言ってられなくなりました。マスキングの父が若かりし頃に組んでいたDEATH GALAXYのメンバーらしき謎の姐御が非常に印象深くドアップで映されているカットが存在していたためです。えっ、こんな印象的なカット用意されといて物語に絡まないとかあり得なくない? そういうわけで、ますますGalaxy周りについては今後の深堀りを期待せざるを得ないところです。

ムラスコ?のシセン

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ムラスコのシセン?

すげぇ! 本物だ!

これは13話において驚くべきことなのですが、ここに来て都築詩船の現役時代についてフォーカスされる可能性が出てきました。僕のどうしようもないリスニング力では当時のバンド名は「ムラスコ」としか聴き取れなかったのですが、そのバンドでシセンという芸名で活動していたとのこと。

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1期の描写からもギタリスト(というよりはギターボーカル)であったことだけは明らかなのですが、これ以上の都築詩船の過去について更なるディティールが提供されそうになってきたことに、些かの興奮を禁じ得ません。3期を経て都築詩船はガールズバンドの聖地を作り上げ、そして大ガールズバンド時代の礎を築いた存在になったわけであり、そんな人物のエピソード・ゼロには純粋に興味をそそられます。

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ちなみに1期の時点でそのムラスコ?らしき伝説のバンドのビジュアルも公開されています。りみ曰く、ツアーなども展開するほど当時は売れていたバンドだそうですし、世代が大きく食い違うチュチュとマスキングが存じ上げていたのは納得です。こういう情報が未だに得られることからも、やはり1期を蔑ろにしてはバンドリ!という作品は語れないわけですね。みんな、1期のBD-BOXを買おう!!ダイレクトマーケティング

広報・戸山明日香

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これまで、夢をひたすらに追いかける姉や友人たちの姿をただ見つめるだけだった明日香が、遂に自分の夢の端緒を開けそうなものに行き着きました。12話の内容ではインタビュアーおよび記者として活動していましたが、より未来を見据えるならば広報と表現するのが最も適切でしょう。自分自身は音楽に携わらない明日香にとって、夢を撃ち抜かんとする者達の姿を世の人々に広く伝える将来像は、現実的でありながら明日香らしさも備えた“夢”と言えます。

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元々、戸山明日香はこの夢を撃ち抜く物語にあって撃ち抜く夢を持たない者という日陰の役回りだったのですが、その明日香が夢の扉を開くのが夢を撃ち抜けなかった者である月島まりなの企画した大会だったのも大変痛快です。この2人の人生が交わることによって、明日香もまたまりな同様に夢を撃ち抜く者を応援する者という同じ立場になる……こういう化学反応が起きるのがやはり群像劇の醍醐味です。だからこそ、この2人と近い立場にある能々美子にとっての“夢”も気になるところなのですが……。

ミライトレインの章でも述べたように、ポピパは世界へとその影響力を広げていくことで未来を切り開いていきます。ポピパだけでなく、Roseliaもかつては唾棄していたメジャーシーンを目指していくことになりますし、RASも特にチュチュは海外にいる母親に自分の音楽を認めさせるのが一つの目標になるでしょう*12。各バンドの次のステージはその版図を広げた末に訪れるものであり、広報としての明日香の役割は今後極めて重要になっていくはずです。

「ミラクルドラム☆スナッピーちゃん」作者・轟ひなこ

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宇田川あこ、佐藤ますき、朝日六花、青葉モカらもハマり、劇中でブームとなっている漫画である「ミラクルドラム☆スナッピーちゃん」。その作者が轟ひなこであることまでは明かされているのですが……いや待って下さいよ、ドラマーでありひなこである人物、滅茶苦茶心当たりがあるんですが?

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そう、Glitter*Greenのドラム、二十騎ひなこです。大真面目に、スナッピーちゃん作者の轟ひなこ=二十騎ひなこの可能性が非常に高いと考えています。問題は、現状最低でも10巻出ているようなので、もし二十騎ひなこが作者だったとすれば在学中から連載を持っていたことになるという点ですが……。しかし、ギターボーカルの牛込ゆりが海外留学している今、グリグリは事実上の無期限活動休止状態でしょうし、そんな中で音楽以外の方法で夢を与えているとすれば、BanG Dream!の先輩の姿として絶大な頼もしさを感じるところでもあります。

本当の最高のステージへ!

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3期の物語は間違いなく最高の形で幕を閉じました。3バンド合同の「BanG Dream!」も掛け値なしに素晴らしかったのですが、同時に最高のステージはこれではないと明示されたものでもあったと思います。夢を撃ち抜く瞬間に!のED映像は30人の楽器が同じステージに上がっているカットで締めくくられており、30人全員が立つステージは結局のところ実現していないのです。撃ち抜くべき夢は、まだまだ残されている……!!

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いっぱい演ろう! みんなで! ずっと、ずーっと演ろうよ!

ポピパでしょ、Roseliaでしょ、RASと……Afterglowとパスパレと、ハロハピとCHiSPAにグリグリ!

今まで出会ったみんなも、もしかしてこれから出会うみんなも一緒に! いっぱい、キラキラドキドキしよう!

30人どころか、香澄の構想には名前が登場したバンドだけでも38人、勿論Morfonicaと出会った後の香澄ならばここにその名前も入ってくるはずです。今回の武道館ライブは大会を勝ち抜いた者にのみその資格が与えられるものだった関係上*13、どうしてもそれは実現しませんでしたが、ひとまず直近ではFILM LIVE 2nd Stageがそれに近いことをやってくれそうなものとして期待が持てます。

これまでに、そしてこれからBanG Dream!に携わる者みんなが夢の舞台で「やりきった」演奏をするステージ、そんなまだ見ぬ最高のライブこそが、バンドリ!プロジェクトの目指す未来なのだろうと確かに感じ取りました。そう、アニメ3期の物語は「やりきった」けど、バンドリ!プロジェクトはまだ「やりきってない」のです。

そんな栄光の未来を夢見させてくれるミライトレインの歌詞で、この13000字以上に渡る長文記事を締めくくりたいと思います。

この夢の先まで一緒に進んでいこうね

*1:13話冒頭の蔵から武道館に向かうシーンが非常に象徴的です。蔵の出口(=未来のメタファー)から、りみだけが目を背けています。

*2:ポピパの一員コピペはネタのように扱われていますが、僕はポピパの真理を正しく突いた表現であると高く評価しています。

*3:同様のことを当ブログでは以前も考察していました。参考までにどうぞ:https://halkenborg.hatenablog.com/entry/2020/01/12/205721

*4:11話視聴直後の考察はこちら:https://halkenborg.hatenablog.com/entry/2020/03/21/180551

*5:とはいえ、メンバーが脱退せざるを得なくなったこと自体は紛れもない悲劇なので、それを美談にしようという姿勢には僕自身としても抵抗があります。

*6:当時のお気持ち表明はこちら:

https://halkenborg.hatenablog.com/entry/2020/03/06/004345

*7:ただまあ、リアルバンドでの出来事とキャラクターの物語を受け手側が都合良くつまみ食いしろというやり口は流石に無責任との誹りを免れないと思います。

*8:7話は他にも「友希那の動機と行動の順序が逆転している」「『Neo-Aspect』を経た友希那が紗夜を見逃すはずがない」といった致命的な問題点を抱えており、この点が解消されただけで全てを水に流せるとはいかないところです。

*9:とはいえ、その上で真剣にバチバチとぶつかり合うようなバトルが見たかったというのが正直なところでもあります。

*10:今のライブハウスの盛況ぶりはガルパのMorfonica 1章で特に強く味わうことができます。

*11:イニシャルが初期衝動であると同時に言い出しっぺの意であるとは明かされましたが、これだけでは説明しきれないほどイニシャルの歌詞は難解極まりなく、依然答えが出た楽曲とは言えません。今後も入念な考察が必要な楽曲です。

*12:ちゆではなくチュチュの音楽として珠手美羽からの称賛を贈られた時、チュチュのこれまでの活動が本当の意味で報われると思われます。

*13:最終回なのにAfterglowPastel*Palettesハロー、ハッピーワールド!にセリフすら与えない徹底ぶりで「勝者の資格」を強調してもいました。