矛盾ケヴァット

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【キコニア】脳髄ぶっこ抜き工場は母殺しのために ~ジェストレスの目指す新世界~

キコニア考察記事、早くも3つ目となりました。本記事は過去にふせったーにも記述したことの(ほぼ)ない、完全新規の考察となります。

とはいえ現状進んでいる考察はここまでですので、突然何か思いつかない限り、キコニア関連は本記事で一旦打ち止めとなります。

次はガルパ関連の記事やりたいですね。ネタはいくつかあるので。

 

 

0. 脳髄ぶっこ抜き工場を実現しようとしているのは誰か?

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キコニアのなく頃にを一言で表すと? プレイ済みの読者であるならば、大抵の方が地獄と回答されると思います。その地獄と名高いキコニアにおいても、特にハードコアなトラウマを植え付けてきたのがこの脳髄ぶっこ抜き工場です*1。 

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脳髄ぶっこ抜き工場を実現した果てに待つのは、人々が肉体を放棄したVR世界です。生老病死の苦しみから解き放たれた、まさに楽園、天国。クリスマスパーティでも、大人たちの都合に翻弄されたガントレットナイトたちが、遂には肉体を捨てたVR世界への移住を望むようになってしまいました。

さて、では誰がこの脳髄ぶっこ抜き工場を実現しようとしているのでしょうか? おそらく、多くの方は、文明の終端にやって来るアイツ、或いは藤治郎とセシャトが敵意を向けている神の代理人だと考えているのではないでしょうか。

ぼくもその可能性を否定するつもりはありません。むしろ賛成したいくらいです。しかし、もう1つだけ、可能性があるとも考えているのです。それが、ジェストレスが脳髄ぶっこ抜き工場を目論んでいるというもの。

本記事ではその可能性を通説に対する異説として提唱します。しかし、異説ながらかなり信憑性のあるものにできたと自負しています。

 

1. 「文明の終端」と「本物の天変地異」は別々の概念

まず、ここをおざなりにしてはいけないので、掻い摘んで説明しておきます。巧妙に混同するようミスリードが行われていますが、「文明の終端」と「本物の天変地異」は基本的に別々の概念です。

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まず、「文明の終端」については考えやすいでしょう。いや、”終端”が何を指しているのかについては議論の余地があるでしょうが、ともかく文明が進んだ成れの果てという抽象的な理解で大丈夫です。

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問題は「本物の天変地異」の方です。三人の王やジェストレスが主に相手取っているのはこの存在。三人の王やジェストレスと共に、黙示録に従って文明を滅ぼそうとしている側です。

お気づきでしょうか。文明を進めた末に訪れる「文明の終端」と、文明を滅ぼそうとしている「本物の天変地異」は、決定的に手段が食い違っていることに。即ち、「文明の終端」と「本物の天変地異」は全くの別物と捉えた方が自然になるのです。かなりややこしいのですが、分けて考えなければいけない部分でしょう。

整理すると、三人の王・ジェストレス・藤治郎・セシャトらの世界の俯瞰を許された人類と、「本物の天変地異」がチェス盤を囲んでいる構図が浮かび上がります。そして、「文明の終端」は、チェス盤とは無関係の第3陣営ということになります。黙示録とは無関係に、文明がただただ発展すれば勝利する陣営です。これをご破産にしたのが、マリオの発明品なのでした。ところで、マリオの発明品は”叡智”とは一度も呼称されておらず、徹底的に”機械”と呼称されています。この点も叡智による文明発展陣営とは別の陣営が、マリオに手を貸して文明の破壊を行った証拠となります。

では、「文明の終端」は文明が発展した末に何が起きることを指しているのか? これに関しては、手前味噌ですが一応仮説を立ててあります。一言で申しますれば、黄金郷の実現です。

 

2. 新世界より ~第九最上騎士団の野望~

キコニアにおける終末を考える上で、「文明の終端」「本物の天変地異」に加えて、もう1つ考慮しなければならないキーワードがあります。それがジェストレスの「新世界」です。

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ああ、いえ、ジェストレスは一言も「新世界」と発言していません。発言したのは上記画像のギュンヒルドと、プロメテウス騎士団の裏切り者であるグレイのただ2人です。ただ、ジェストレス直属の騎士団は名を第九最上騎士団と言います。第九……新世界……これを結びつけるものに心当たりはないでしょうか。そう、ドヴォルザーク交響曲です。ドヴォルザーク交響曲第九番の名が「新世界よりなのです。緊張してしまう出来事の前にトイレで聴くと集中力が高まる名曲ですね。

詳細は省きますが、ギュンヒルドはジェストレスがAOUに送り込んだスパイとしてあまりにも濃厚なキャラクターです*2。そのギュンヒルドが「新世界」という言葉を使っている以上、それはジェストレスの目的と考えて相違ありません。

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肉体を放棄したVR世界と「新世界」、非常に結びつきの良い概念ではないでしょうか。そして、ジェストレスが「男女ひとりずつ」の生存者を残そうとしているのも、VR世界のサーバー管理者を絶やさないためであると考えることも出来ます。そして、その新世界のアダムとイヴとして、男女1人ずつのパンドラを生贄にしようと目論んでいる……。パンドラだけが新世界に行くことを許されているというのは、そういう意味だと捉えることができます。パンドラが子孫を残し続けることで、新世界はサーバー管理者を失うことなく存続できるというわけです。

なお、この説は自動的にコーシュカの勝利条件を導くこともできます。自分がサーバー管理者などという生贄になるのは御免被るので、もう1人のパンドラだけにサーバー管理者の役目を押し付けて、自分はVR世界へダイブする。コーシュカにとって、人類全体の利益などというものには興味がありませんし、自分だけが貧乏クジを引かされるかのようなジェストレスの新世界構想は最悪の未来でしょう。それを打開し、自らも肉体を捨て去れる世界の到来こそが、コーシュカの勝利条件であると考えられます。

 

3. 奥様、母親、そしてマザーコンピューター

突然ですが、ここでとってもSFな概念を導入します。マザーコンピューター。全てのコンピューターたちの親玉とでも言うべき存在です。実を言うと、このマザーコンピューターが登場する伏線が作中に散りばめられているのです。

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まずはケロポヨたちの奥様。青都雄が都雄というプログラムの抹殺の決意を新たにする場面で、突如として提示された存在です。ケロポヨは全世界のセルコンに搭載されたアンインストール不可のAIです。そして、そのケロポヨたちを統括する存在ともなれば、世界中のセルコン・情報通信機器を支配下に置く存在と言えるでしょう。まさにマザーコンピューターです。実のところ、このマザーコンピューターこそが文明の終端にやって来るアイツの正体ではないかとぼくは睨んでいます。

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続いては都雄の母親。キコニアにおける最大のキーキャラクターと言っても良い、非常に謎めいた存在です。一方、青都雄によって都雄の人格は”殺人プログラム”呼ばわりされてもいました。この”殺人プログラム”たる都雄の母親がマザーコンピューターという読み解きもできると考えます。肉体の母親とは別の母親がいるというわけです。

なお、キコニア発売直後に配信されたポメグラジオ*3にて、竜騎士07氏は「キコニアではない別の仮題として”かせたい物”あった。しかしそのタイトルだと本質に迫りすぎるのでボツにした(要約)」とコメントしています。この仮題がカッコウく頃にであったのではないかと思うのです。キコニア同様に出生に関連したテーマを表現でき、そして托卵という分かりやすすぎる生態をしている……。カッコウほど、キコニアのボツタイトルとして相応しい存在もないと思えます。余談ですが、ひぐらしで鷹野に接触した東京のエージェント・野村のコードネームもまた郭公なのです。

マザーコンピューターによって御岳都雄という肉体・脳に送り込まれ托卵された人格、それこそが殺人プログラム・御岳都雄の人格の正体というわけです。

  

4. ジェストレスの目的は、マザーコンピューターの支配からの脱却

さて、文明が進んでいき、ますますセルコンは世界中を席巻しています。もはや文明の終端は間近です。セルコンをマザーコンピューターが支配しているとすれば、全人類はやがて、マザーコンピューターの操り人形のようになってしまうでしょう。

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そうなったら最後、人類は尊厳を永久に失います

そして、人類がサーバー内で暮らす新世界は、人類の尊厳を守るものです。サーバーを管理しているのはパンドラ――人類なのですから、人類の運命を、人類に委ねていると言えます。そう、これはマザーコンピューターという毒親から、人の子たちが尊厳を取り戻す戦いだったのです。

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そして、都雄に語りかけてくる謎の声がマザーコンピューターであるとするならば、 必然的にあやつ=ジェストレスが導かれます。都雄とジェストレスは現状出会ってもいないので、ここに矛盾は生じません。

 

5. 「文明の終端」と「本物の天変地異」は、どちらもマザーコンピューターの目的

おい! 1章と全然言ってることが違うじゃねーか!!

……いえいえ、これはとても単純な話で、「文明の終端」と「本物の天変地異」は、概念としては別だけどその主体が同一という話でしかありません。第3の陣営なんて無かったんや!

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まず、都雄に語りかけてくる声がマザーコンピューターのものであると断定して考察を進めます。上の画像から、マザーコンピューターの”悲願”は都雄の生ある間に訪れない可能性がありました。マザーコンピューターとしては、この場合の保険の手を打っておく必要があったと言えます。このノーチャンスの場合の保険がセルコン幻想社会による「文明の終端」であり、緩やかに人類全体を支配するプランです。

しかし、マザーコンピューターが本当に成し遂げたかったのは「本物の天変地異」の方であると考えるべきです。マザーコンピューターが支配下に置いているのはあくまでコンピューターであり、直接は人類の営みに対して手を下せないという制限があると思われます。なので、その機会が訪れるのを座して待つしかなかった。しかし、何者かの手引によってマリオの発明品が完成したことでチャンス到来、満を持してチェス盤に着席したというわけです。

チェス盤に着席する前のマザーコンピューターの目的が「文明の終端」、チェス盤に着席した後のマザーコンピューターの目的が「本物の天変地異」。このように理解できるでしょう。そして、この考えならば、文明の終端にやって来るアイツ=黙示録による人類滅亡を計画した神の代理人=マザーコンピューターと全てが繋がります。

では、「本物の天変地異」とは何でしょう? この点については現時点では全く分からないところですが、ひとつ確かなのはヨハネの黙示録のラストから考えて、人類を選別するものであることです。原典の方は敬虔なキリスト教徒だけが生き残り、それ以外の人類はしこたま地獄を味わって滅ぼされるというものでした。そもそもにしてキリスト教毒親じみてて笑えますね。私の言うことを聞かない”わるいこ”には罰を、”いいこ”には花マルですっ*4 

なお、この辺りにフィーアの研究所最下層の千年タイムカプセルが絡んでくるのではないかと考えています。残っているピースで接続しそうなものとしては、やはりこれが妥当でしょう。

 

6. キビヤックと脳髄ぶっこ抜き工場

以上が、ジェストレスが脳髄ぶっこ抜きを実現しようとしているという説になります。それなりに説得力があり、各種の描写を上手く繋ぎ合わせることができたものと自負していますが、どうしても繋がらないピースがひとつだけ存在します。それが、臭い料理対決のフラグメントにおけるキビヤック

上記の記事で、シュールストレミングは地球が人体を発酵保存している暗喩ではないかという考えを元に説を展開していきました(より近いのはホンオフェでしたが)。それと同様に、キビヤックVR世界を暗喩したものではないかと考えることができます。

中身を啜り取られる海鳥たちは脳髄を抜き取られる人類に相当するでしょう。しかし、海鳥を保存するアザラシの腹は、母胎・子宮、つまりはマザーコンピューターの暗喩のようにも読めるのです。

この描写からすると、マザーコンピューターが脳髄をぶっこ抜こうとしているのが自然なようにも思えてきてしまいます。しかし、そうすると都雄の脳内に語りかけてくる声は、そして”あやつ”は一体……という迷路に陥り、大変悩ましいところです。

また、この描写はクロエの所属するメタ陣営を洗えるものでもあると思います。それ故に何とか答えを出したいのですが……。

*1:呼称が安定しないことに定評がありますが、本記事ではこの呼称で統一することにします。

*2:とはいえ、面従腹背してジェストレスに反旗を翻そうとしているキャラクターでもあると考えています。

*3:ここから聴けます

*4:元ネタ:なく頃にシリーズファンなら買って損はありません