矛盾ケヴァット

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【キコニア】「LATOの女の子は外国の億万長者を狙ってる」←それっておかしくねぇ?だってここLATOじゃん

キコニア記事はそこそこ久しぶりになってしまいました。バンドリ!の方が激動の展開だったのでそちらに注力していたのが全てなのですが、07th Expansionとしても大きな動きがありましたね。ひぐらしの新アニメプロジェクトが発表されました。

成程、こんなビッグプロジェクトが水面下で動いてたんならキコニアPhase2の発売延期も致し方ないねと色々納得してしまいましたが、ともあれめでたいニュースには変わりありません。まあ、期待よりは不安の方が大きいのが正直なところですが……*1

それはさておき、久々のキコニア記事です。もしかしたら記事タイトルに既視感が有る方もいらっしゃるかもしれませんが、だとすると当ブログの記事を読んで下さっている方ですね。ありがたいことです。

本記事も上の記事と同様、キコニアの各陣営に根付く倫理観の、根本的な違和感について述べたものになります。

 

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A3Wの覇権陣営、LATO。霊素資源に恵まれ、人々は何不自由ない暮らしをしていますが、そんな中にあっても女性達はより裕福な相手との恋を望むようです。まったく、人の欲望とは尽きないものだと肩を竦めたくもなりますが、このシーンにはかなりの違和感を覚えてしまいます。まず、玉の輿自体が女性蔑視の概念であるという点。主としてAOUの制度を通してジェンダー問題にも鋭く切り込んだ本作ですが、世界のリーダーを名乗るLATOのジェンダー倫理がAOUに劣るというのは少々考えづらいでしょう*2。LATOがキコニアを追い払ったかどうかは未だ判然としないものの、最も先進的な陣営であるべきLATOにおいて、女性のキャリア形成が男性頼みであるかのような描写は引っ掛かるところです。

……というのは本題ではなく、もっと根本的におかしい点がこの描写には含まれています。いや、ここLATOですよ? こんなセリフが出てくるなんてあり得ないとは思いませんか?

 

 

 

だって、LATOの方が億万長者見つけやすいに決まってるじゃん!!!

 

 

 

そう、問題は玉の輿云々ではなく、「億万長者」の枕詞に「外国の」が付属している点にあります*3。単純に、億万長者の絶対数はLATOがどの陣営よりも多いはずで、いくらLATOのリゾート産業が盛んで観光客も多く訪れるとはいえ、他4陣営から探すよりLATOから手近に見繕った方が玉の輿には手っ取り早いはずなのです。

ABNやACR以上に社会制度がブラックボックスなLATOのことですし、この原因を断定するのはハッキリ言って不可能です。パッと思い浮かぶだけでも、社会主義のようになっていて平均値は高いけど億万長者は実は少ないとか、LATO男性と結婚すると女性の財産は男性のものと見做されるような差別的な制度が実はあるとか、現実的かどうかはともかく否定しきれない案はいくらでも考えつきます。

しかし、ここで敢えてもっと突飛な、けれども作品のテーマに沿った仮説を提唱したいと思います。LATO女性が外国の億万長者に求めているのは財産ではなく、その希少性であるというものです。

 

以前の記事でも触れましたが、情報量という概念があります。本来であれば記事を読んでいただきたいのですが当該記事の出来が正直あまり良くないため再度ここで解説すると*4、情報量は生起確率の高いものほど値が小さく、低いものほど値が大きいという、情報の”価値”を相対化した概念です。全ての事象の情報量について総和を取ると情報エントロピーとなり、これは熱力学のエントロピーと密接に結びついていると言われています。そして、霊素やドライツィヒ変換といった設定のベースはこの情報エントロピーであろうと僕は睨んでいます。

さて、LATOの社会情勢を思えば、外国の億万長者との恋愛・結婚・出産は極めて情報量の大きい出来事です。そして、『その社会制度においては非常に希少な婚姻』に、どこかで見覚えはないでしょうか……?

再度同じ記事のリンクを貼って恐縮ですが、AOUの近親婚も同様に希少な関係の婚姻と言えます。本記事のタイトルを当該記事になぞらえたのはノリや勢いではありません。AOUの近親婚と、LATOの国際玉の輿婚は、情報量が大きい婚姻という点で同じなのです。

そして更に飛躍しますが、この事実はまた別の可能性を示唆します。社会的に生起確率の低い(=情報量の大きい)親同士の配合から生まれてくるのがパラレルプロセッサーであるというものです。勿論これに科学的な根拠は一切ありませんが、優れた脳の持ち主が情報量の大きな関係から生まれる、というのは物語の設定として十分な説得力を持っているとは思います。何より、これならば「外国の億万長者との恋がしたい」というLATO女性達の動機も明白になります。優秀な子供を生みたい、それが彼女達のホワイダニットです*5

発想を柔軟にしましょう。SFというキッチリとした科学ゲームではなく。連想、妄想、何でもアリのインスピレーションで攻めるべきなのです。

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AOUやLATO以外でも、こうしたそれぞれの社会特有の生起しづらい<奇跡>の交配が各陣営に存在しているものと考えられます。たとえば、ABNなんかだと統一宗教の信者と”異教徒”の婚姻になるでしょうか。また、これが何人かのキャラクターのルーツにも絡む可能性が高そうで、キャラクターを考える上でも避けては通れないものになるかもしれません。

近々、僕はキコニア本編を再び通読するつもりでいますが、こうした「それっておかしくねぇ?」と言える描写を発見したいと思います。

*1:僕はディーン版のアニメひぐらしを映像化作品として高く評価しており、その秀作を超えなければいけないにもかかわらず、作品の質を大きく左右する監督の名前が最初のプロモーション時点で出てこないところに、特に大きな不信感を抱いています。

*2:まあAOUAOUで第二秘書なんて制度が公然と存在するくらいにはジェンダー観が歪んでいるわけですが。

*3:「他陣営の億万長者」ではない=LATO内の他国の億万長者を含むという解釈もできますが、作中で何度も国と陣営は混同して表記されていることを鑑み、本記事ではその可能性は扱わないこととします。

*4:僕自身、当該記事を書いている時点では情報量や情報エントロピーを理解しかねていましたし、後日改めてちゃんと整理した記事を書こうと考えています。

*5:当然、LATOがキコニアを追い払っている場合、自分で出産する必要はありません。ただ、生まれてくる子供が超優秀だと分かりきっているならば、工場に送らずに「わしが育てた」をやりたいというのが人情でしょう。相手が億万長者なので育児費用を気にする必要もありません。